私にはルームメイトがいる。
私には、という表現がそもそもおかしいけど、私にも?いや、もっとおかしい。
私はルームメイトとルームシェアしています。
これでいこうかな。
今の住居に住み始めたのが2013年7月末。ほぼ8月。
今の街に住み始めて13年。
主賃貸契約を結ぶのは7件目。
契約更新はした事が無いから、全物件2年未満で転居してるはず。
短いとこは半年とか。
家が無い時は、間借りしてたり車で生活してたり、今は多くなったけど当時はまだまだ少なくて安かった貸し倉庫に住んでたり。
そんな感じに、家族以外の誰かとの共同生活って意味では、ぷよぷよ並みの柔軟性を身に着けてきた私だが、2013年の夏から共同生活を始めた相手は、今までと少し毛色が違った。
文字通り、毛色も違った。
彼女は(女性である)まず、人間嫌いであった。
特に、男性が大嫌いであった。
唯一許せる範囲らしい母と愛犬の花を除けば、他は何人たりとも私の領域に踏み込んで来ようものなら制裁を覚悟せよ。
くらいの圧力を発しながら、彼女は常に玄関には耳を澄ましている。
彼女は私の仲間内では、会長と呼ばれている。
もちろん彼女には本名があるけど、私たちの仕事絡みの中で空いてるポストで最高峰なのが、会長。
CEOとかCPOとか色々あるけど、カイチョー。
ですね。
KAICHO.
2013年9月。私は出張で大阪にいた。
今の仕事に繋がる業界へのアドバイザー的なお姉さんと7月に出会い、この時は呼びつけられて彼女の地元の大阪にいた。
その帰還間際に母から連絡があった。
”ふぅが調子悪いんだけど、帰ってこれない?”
帰りますともっ!!
私は決してタイミングを逃さない。
この時ふぅは12歳と10ヵ月。
命が危ない事は数ヶ月前からわかっていた。
ふぅは、2010年に家族になったビーグルの男の子。
当時の写真はコチラ中盤を
→ふぅ君
しかしこの時、フライト直前に悪夢が待ち構えていた。
大阪の姉さんにとりあえず、”急用で帰るからまた今度”と愛想のあの字もない事務連絡メールを当日のフライト直前に送ったところ、折り返しのメールではなく電話が来て、
「何時のフライト?もう取ったん?
ホテルチェックアウトしとん?
じゃ伊丹のスタバにおってや。
20分で着くから待っとってな。」
実際には聞き取れない程の速さである。
生粋の関西人なので・・・。
がしかし、私は何のために待たされるのかを聞いていない。
20分で着くと言っていた姉さんが来たのは、約1時間後。
ルーズ過ぎ。
見込んでフライトは変更してあったからそこは問題じゃないんだけど、問題はその後。
姉さんはナゼか不必要にちょっと大きめなバッグを持っていた。
「動物好き?」
「人間よりは・・・」
「ほなぬこ育てなはれ」
「ぬこ・・・?」
姉さんはエコバッグの様なファスナー付きのバッグを開けた。
そこには、目も見えてない様な子猫が二匹、無造作に突っ込まれてた。
このバッグを肩にかけて原付で20分走って来たのだというから、子猫には同情しか無い。
さらに尋ねてもいないのに姉さんは喋り続ける。
「女同士のが相性いいと思うんや。
こっちがママ似で美人だけど鳴いてうるさいんや。
でも美人やで。
こっちはパパ似で大人しいけど、毛並みがいまいちで・・・
良く言えば坂本龍馬風?
好みやねんなぁ。」
そんな事聞いてないし。
一刻も早く帰還せねばならない私に、全て断るという選択肢はなかった。
無意識下で私は応えていた。
「しょ・・・
将来有望な方を・・・」
今思い返しても、まったく意味がわからない返答を返し、
姉さんは「じゃコッチや!」と、
坂本龍馬風の方の子猫を、私のバックの中身を全て破棄した上で再びバックに収めた。
「こっからバスで神戸行ってゲージレンタル出来るように手配しとくから、今すぐ神戸向かって手続きせなあかんやろが。
次のバス4分後な。」
・・・。
出張用キャリーケースを引っ張り、手荷物用バックには名も無い子猫が私が昨夜パジャマ代わりにしていたTシャツの上にうたた寝し、そのバックから強制的に追い出された私物はコンビニの袋にぶら下げて・・・
なんて理不尽な世の中なんだ。
そう思った。
そしてバックに坂本龍馬風の女の子猫を入れたまま帰還し、この三日後にふぅは亡くなった。
家族みんなに囲まれて、ふぅは幸せな最期を迎えられたと思う。
そんな状況下で名も無き新たな命を預かってしまった事を、私は半月近く母に言えずにいた。
そしてこの名も無き坂本龍馬風の女の子の名付けに関しては、数日に渡り議論が交わされた。
「この子の名前は?」
「名など無い。」
「・・・。」
「名前の候補は?」
「それも無い。」
「今考えましょう。候補上げてみて下さい。」
「ジュエル・・・?」
「なぜ?」
「宝石みたいにかわいいから。」
「却下。次。」
「トルマリン・・・?」
「なぜ?」
「キレイな碧い瞳だから。」
「却下。日本人が呼べる名前にしましょうよ・・・。」
「トパーズ・・・?」
「それも石繋がりでしょう。石却下。」
「プリンセスひめ。
ドリーマーゆめ。」
「あ。それならイケるかも・・・」
「どっちがひめでどっちがゆめ?」
「そんなん自分で決めなはれ。」
・・・・・・。
そうして私のルームメイトは、2013年7月生まれの「ひめ」となった。
あれから2年半近く彼女と生活しているが、まだまだ課題山積みの毎日である。
ルームシェアは完璧に出来ているが、遊びとケンカの違いが分からず、私の手はいつも傷だらけなのである。
事情を知らない人が見たら、あまりの傷の多さに口を閉ざしてしまう程・・・。
先日のDIYで(→Do it yourself.)彼女の専用ベットを作ったら仕事中にヒザに乗ってくる事は無くなったけど、きっとまたすぐに、新たな問題に直面することになるだろう。